WHISPER CONVERSATION 03
NEWブランド始動記念・ゲームクリエーター対談Vol.3
世界を股にかけて活躍するサウンドプロデューサー/アートディレクター『Baiyon』が、
その独特な感性で各界のクリエイターとディープなコミュニケーションを交わす対談連載。
ゲストには、PS3ソフト『TOKYO JUNGLE』で2012年のゲーム界を騒がせた、株式会社クリスピーズ代表・片岡陽平氏が登場。
Vol.3では『愛』についての話題まで飛び出して、よりディープな展開になってきました。
Vol.3 リセット問題とパワーゲーム。
片岡 : 難しいのはやっぱり、『クリエイティブ』と『愛』をどうやって両立させるかだね…。
例えば家庭を持ったとしても、自分はクリエイティブを優先してしまうかもしれない。
それはしょうがないのか?それともしょうがなくないのか?Baiyonくんはどうするんだ?とか(笑)。
BAIYON : あああ…。
俺は、何かを始めるとき、できる限りまっさらになりたい。って思ってしまう。
ストイックになりがちだよね。
片岡 : ありますよね。俺も上京する時、これで過去を消せるって思った。
そっからガーーッて世界が広がったんですよ。
でも、日常に関して言えば、リセットと言われても良く解らない。とにかく仕事しないとさ。
家に居る時も「休むって何なんだろ?」って感じ。
BAIYON : 「休憩した方が良いよ」って言われても。
「それって何?」みたいな。
片岡 : 例えば車を運転して出かける時も、この体験をどう生かそうか?ってことしか考えてない。
ーープライベートはともかくとして、仕事というシチュエーションではチームに対して『愛』をうまく表現できていると思いますか?
お互い、『孤独』とか『自分勝手』と言いつつも、他人と一緒に作らねばならない『ゲーム』という仕事を続けられていますよね。
片岡 : それは……。
BAIYON : その答えはまだ出てないし、永遠に出ないと思ってる。
例えばゲームだけじゃなくて好きな映画監督とかでも、その部分を作品ごとに探して挑戦しているのを感じるのが好きで。
片岡 : 今だと、アプリのように小さな予算で実現できる企画なら、関わる人は少なくできるし、 すぐ実現できるんですけど。なんで自分は難しいほうに挑み続けるのだろう?ってのは思う。
BAIYON : 企画が立った時点で、地獄に突入してるのはハナから解ってるのにね(笑)。
片岡 : 昔体験した感動を、アプリやカジュアルゲームで感じたことが無いんですよ。
おそらくそれが作れると思えば、作ると思います。
でも、今のところ自分の頭の中にあるサイズを出していくと、ある程度の予算になってしまうし、いろんな人の力が必要になりますね。
BAIYON : 俺の場合は、ゲーム作りにどのくらいの人数が必要とか、そんなことすら知らなかったわけ。
始める時にチームでやるって言われて、人居るしな。なるほどって(笑)。
ーーお二人は、大金を動かすための作戦や、 大衆の心を動かすパワーゲーム自体をコントロールしたいというモチベーションはあるのですか?
片岡 : そこには、なんの『衝動』も含まれてないや。
BAIYON : 人とコラボレーションするのは好きだけどね。
片岡 : それは人を動かすっていうか、人と作ることが好きなんじゃないの?
BAIYON : そうかも。俺が何も解らなくてもゲームを作れたのは、 パーティーのオーガナイズやDJとかで、人の流れに関わってきた経験が大きかったと思う。
片岡 : 俺そういう経験ないよ。部活も個人でプラモデルを作るモデリング部だったし(笑)。 そもそも集団行動の適正はないかも。
BAIYON : 二人の共通点としては、 シンプルにおしゃべりが好きってのはあるね。 「こんな面白くてヤバいことを知ってほしい!」って、解ってもらうまでずっとしゃべってる。
片岡 : あー。そうかも。
中学一年生の時、学級通信に作文が載ったことがあるんだけど、
それが、『Nintendo 64』が『PlayStation』に勝つための戦略を綴ったカルト文で、なぜか先生が載せてくれたんだけど、
そこでも、みんなから「気持ちわるい」みたいに言われて(笑)。
でも、ちゃんと意思表明できたのがスゲー気持ちよかった。
「おまえらは知らねーだろうがな。こんなにすげーんだよ任天堂は!」って。みんなPlayStationしか遊んでなかったしさ。
BAIYON : そういうリアクションで勉強になることは沢山ある。
俺も、小学校で標語のポスター展があった時に、『花が泣いてる』って書いて、絵は評価されて最終選考に残ったんだけど、
先生に「すごく良いけど、ネガティブな方向性だから賞を取るのは無理なんだよ。」って言われて。
「ああ。人ってそういう判断をするんだ。」って思った。
片岡 : びっくりするよね。
でも、そういう経験が蓄積されてくると、みんな独善的な物差しで物事を測ってるんだなってことも解ってくる。
それが解った時に、大人がただの人間に見えるよね。
BAIYON : その瞬間に、自分がジャッジできる立場になるんだっていう意識にむかってゆく。
片岡 : 自分の感性も何もかも否定されるから、今でも人が怖いですよ。 でも、それをゲームにすると、こんなにワクワクするものなんだ。 って思うから、「孤独の豊かさを味わってみない?」ってゲームを通じて誘ってるんだね(笑)。
BAIYON : なんなら、ケータリングも用意して、酒も用意して、すごい音響設備を整えて、 みんなおいでよ!って誘いたいくらい。でもそんなに来てくれへんみたいな(笑)。
片岡 : 俺ね、すごい面白い漫画を見つけて、友達に読んでもらうとするじゃん。
その時、ずっと後ろで見てるの。それで、自分が感動して欲しいところでページめくるのが速かったりすると、スゲー不満なの。
BAIYON : うわーめんどくせー(爆笑)。
片岡 : 今は、もうしないよ(笑)。
BAIYON : 普通の人は、当たり前に気づくことなのかも知れないけれど、 俺らはあまりにも気づくのが遅いね。
ーー映画監督などで、お客さんと同じ空間で観るのは怖くて無理だ。という方がいらっしゃいますよね。
お二人はどうですか?
片岡 : 俺は観れない。『TOKYO JUNGLE』が発売された時も、Google検索すらしてないです。
ーーおもしろい漫画を見せる時のエピソードと対照的ですね。
そのギャップはどの辺にあると思いますか?
片岡 : 面白いって感じた作品は、自分の中で否の打ち所が無いんですけど、
自分の作品は非の打ち所がたくさん分かるからだと思いますね。でも、良い反応をスタッフから伝えられたりした時は、
ご飯が食べれなくなるくらい嬉しい。
テンションがあがりすぎて仕事ができない。立ち上がって一時間くらいオフィスをうろうろしてる(笑)。
プロフィール
片岡陽平(かたおか ようへい)
ゲームディレクター/株式会社クリスピーズ・代表取締役
宮崎県生まれの27歳。 株式会社クリスピーズ代表取締役『TOKYO JUNGLE』ディレクター。 宮崎から上京し美術専門学校に入学後、SCEのクリエイター発掘プログラム「ゲームやろうぜ!2006」に応募し合格。 21歳の時に株式会社クリスピーズを設立する。 最新作「TOKYO JUNGLE」では、企画の立案から、ゲームデザインやアートワークのディレクションを行う。 また、ゲームと併せてパッケージやポスター、PVといった広告素材のデザイン、監修を行い、 その型破りなゲーム内容とパッケージ、プロモーションは国内外で話題を呼び、新規タイトルとしては異例のセールスを記録した。
TOKYO JUNGLE
人類が消え、動物たちの弱肉強食の世界と化した東京が舞台のサバイバルアクションゲーム。
プレイヤーの目的は、50種類を越える動物を操り、ひたすらに生き延びること。
ランキングを通して全世界のプレイヤーと競うサバイバルモードと、人類が消えた謎に迫るストーリーモードという2つのモードを楽しむことができる。
Baiyon(バイヨン)
サウンドプロデューサー・アートディレクター
2008年/アート&サウンドを手掛けたPlayStation3ソフト『PixelJunk™Eden』を発表し、
独特のアートとサウンドが融合した世界観が大きく反響を呼び、世界最大のゲーム開発者向けカンファレンス
「GDC」で行なわれた「Independent Games Festival Awards」3部門、「GDC Choice Awards」1部門と、
国産タイトルとしての初ノミネートにも関わらず4部門ものノミネートという快挙を成し遂げる。
2012年6月アート&サウンドディレクション、コンセプト等を手掛けたPlayStation®Move専用タイトル”PixelJunk™ 4am”が発売された。PlayStation®MoveとPlayStation®
Eyeを使いインタラクティブなビジュアルと共にテクノ、ディープハウスを基調とした様々なサウンド、エフェクトを駆使して自分のパフォーマンスをリビングルームからPlayStation®
Networkを通してライブ配信する事が出来るという斬新なコンセプトが話題となった。
それ以後、積極的にコラボレーションを展開、LittleBigPlanet2への参加、
米のゲーム専門誌「GameDeveloper」マガジンにてゲーム業界の重要人物50人に選ばれる。
また積極的に各地で講演も行っており、2012年には46ヶ国243ヶ所で行なわれたGlobal Game Jamのビデオ基調講演をウィル・ライトらと共に務めた。
PixelJunk™ 4am
PlayStation Moveを操作して音楽を演奏する、
オーディオビジュアルコンポーザーゲーム「PixelJunk™」シリーズの最新作「PixelJunk™ 4am」がPlayStation Storeで配信されている。
“バーチャル・オーディオ・キャンバス”と呼ばれる空間内でPlayStation Moveを操作することで、
トラックやサウンドエフェクトをコントロールし、楽器のように音を鳴らして自分の曲を演奏することができる。
プレイヤーの演奏 はリアルタイムにネットワーク配信され、無料のビューアーを使うことで誰もがその演奏を聴くことができる。
また、本作ではシリーズ第3弾「PixelJunk™Eden」でサウンドとグラフィックを手掛けた、
マルチアーティスト・Baiyonが、すべてのサウンド、アートディレクション、アーティスティックコンセプトを手掛けている。
Whisper Not
Baiyonをアートディレクターに迎えた、MHz 新ブランド『Whisper Not』始動。
第一弾アイテムとして、ブランドID『鍵』をモチーフにしたマジックペン付きTシャツをMHz SHOPにて発売開始
MHz SHOP